札幌の新築住宅は5軒に1軒が「札幌版次世代基準のスタンダード」以上
2020.07.28家づくりのヒント札幌市内の新築戸建住宅の5軒に1軒は、札幌版次世代基準スタンダードレベル以上の断熱性能一。札幌市がこのほど公表した「札幌版次世代住宅に係るアンケート調査結果」によると、2018年度に札幌市内で新築された住宅の断熱性能は、ZEH基準となるUA値0.40W以下が55%ち過半数を占め、今年度の市の補助対象となるスタンダードレベル(0.28W以下)以上の住宅は、20.3%と全体の1/5に達していることがわかりました。
新築住宅の断熱性能はやや低下傾向
このアンケート調査は、2018年度に①札幌市内戸建住宅の確認申請を5棟以上申請②札幌版次世代住宅性能評価を申請③札幌市内の事業者でZEHビルダーに登録・公開一のいずれかに該当する住宅会社を対象に実施。前年とほぼ同じ48社が回答しました。
回答した会社が建てた戸建住宅の断熱性能をランク別にみると、国の省エネ基準相当となる札幌版次世代世代基準のミニマムレベル(UA値0.46W以下)が33%と最も多く、続いてベーシックモデル(同0.36W以下)が23%、補助金の対象となるスタンダードレベル(同0.22W 以下)は合わせて0.4%と、ごくわずかでした。集計から、全体の12%は国の省エネ基準をクリアしていないことになります。
前年度調査と比べて、スタンダードレベルが11ポイントもダウンとなった一方、ベーシックレベルが逆に11ポイントアップとなっています。札幌市では「(断熱性能が)スタンダードレベルとベーシックレベルの間に落ち着いてると考えられる」と話しています。「今の住宅は冬は暖かくて光熱費が安いのが当たり前」と思っている方も多いと思いますが、そうとは限らないということです。
また、標準仕様とするUA値は、最も多いのがベーシックレベルで31%。次いでミニレベルが23%、スタンダードレベルが15%、ハイレベルが4%、未設定が17%など。トップランナーやミニマムレベル以下の性能を標準とする会社はゼロでした。前年とも比較では、スタンダードレベルが12ポイントダウンと大きく減り、その分、ベーシックレベルが10ポイントアップと増えたのが目に付きます。実際に建てた住宅と性能分布が違うのは、予算に合わせて性能をダウングレードしたのかもしれません。
気密測定を行っている会社は3軒に2軒
気密性能=C値は0.5㎝2/㎡が38%で前年比3ポイントダウン、1.0㎝2以下が27%で同比2ポイントアップ、未測定が35%で同比1ポイントアップ、未測定が35%で同比1ポイントアップとなり、気密測定を行っている会社は前年同様65%ち、ほぼ3軒に2軒の割合。
標準仕様とするC値は、0.5㎝2以下が前年比5ポイントアップの44%。同比13ポイントダウンで35%の1.0㎝2を上回りました。他に未設定が同比6ポイントアップの19%など。
今後標準にしたいのはスタンダードレベル
今後標準にしたいUA値は、前年と同じくスタンダードが最も多いが、その割合は35%で前年比8ポイントのダウン。続いてベーシックレベルが21%、ハイレベルとミニマムレベルがそれぞれ10%など。前年はスタンダードレベル以上が58%と過半数を占めていましたが、2018年度は12ポイントダウンの46%になり、標準の断熱性能をベーシックレベル以下に抑える会社が多くなってきました。 同じく今後標準にしたいC値は、0.5㎝2以下が前年比3ポイントダウンの71%で、1.0㎝2以下が19%、未設定が8%など。
なお、ベーシックレベル以上の高断熱住宅をどのくらいのユーザーが希望するかは、「ほとんど希望」が44%、「希望しない」が21%、「半数程度」と「3割程度」が各13%、「7割程度」が10%という結果に。前年は設問内容が多少異なるものの、ベーシックレベル以上の高断熱住宅を希望するユーザーの割合は51%でした。
<用語解説>
札幌版次世代住宅基準
参照:https://www.city.sapporo.jp/toshi/jutaku/10shien/zisedai/zisedai.html
札幌のような寒い地域では、東京や大阪などよりも住宅で暖房に使うエネルギーが多いので、地球温暖化防止のために国の省エネ基準よりも厳しい独自の省エネ基準を作り、クリアした住宅に補助金をだすことで、普及させようとしています。この制度は全国から注目されており、道内の住宅の高断熱化に大きな影響を与えています。
UA値
外皮平均熱貫流率のこと。住宅の断熱性能を表す数値として使われ、数値が小さいほど高性能(高断熱)です。国の省エネ基準では、札幌や旭川、帯広ではUA値=0.46W以下と定められていますが、札幌市独自の札幌版次世代住宅基準では、標準とする「スタンダード」基準で0.28Wと4割近く高断熱にしなければなりません。さらに、暖房や換気に関する厳しいエネルギー基準もあり、これらをクリアするのは大変ですが、SHS工法では比較的簡単にクリアする事ができます。
C値
相当隙間面積のこと。1m2あたり何平方cm2の隙間が空いているのかを表します。気密性能を表す数値で、少ないほど高性能(高気密)です。UA値がいくら良くても、住宅に隙間が大きければそこから熱が逃げてしまい、暖房効率が落ちてしまいます。札幌市は、スタンダードレベル以上ではC値0.5㎝2以下を求めています。外張り断熱のSHS工法では、気密層が連続するため気密性能を向上させることが比較的簡単で、0.5㎝2/m2以下を達成している会員工務店様が多数あります。