コロナ対策で2階リビングのプランが増える!?
2021.02.27家づくりのヒント住宅のコロナ対策は、まだまだわからないことが多いのですが、建築の専門家はその中で今できることを考えて行動しています。ここでは、1ヵ月前に開かれた建築専門家向けのフォーラムの内容をまとめました。
それによると、大事なのは換気装置がきちんと働くように住人がお手入れすることと、これから新築する人に対しては2階リビング、1階にベッドルームと水回り(風呂、トイレ)を持ってくるプランがコロナ対策に有効ではないか、という内容です。
換気性能を保つには定期的なフィルター清掃が大事
1月21日、(一社)北海道建築技術協会が工務店・設計事務所向けにHoBEAフォーラム2021『住まい・コロナの今とこれから』を開催しました。北海道大学大学院教授の林基哉氏と道総研・北総研主査の村田さやか氏が新型コロナウイルスの特性や、換気装置のフィルター掃除の重要性などについて基調講演を行ったほか、北海道大学大学院准教授の菊田弘輝氏をコーディネーターに迎えてシンポジウムも行いました。
冒頭、北海道科学大学教授の福島明氏がフォーラムの開催趣旨について説明。「コロナ禍により、家づくりをする上で換気への配慮が強く求められている。今日は換気を設計通り運用していくことの大切さを認識する場にしたい」と述べました。
続いて林氏が「コロナと換気、分かっていること、分からないこと」、村田氏が「換気設備、在っても換気無し?」と題して講演。
林氏はまず、新型コロナウイルスについて現状で分かっていることとして、①換気が非常に悪いと感染しやすい②空気中での感染力の持続性が高い可能性がある-ことなどを挙げた一方で、「分からないことの方が断然多い。例えば、どれくらいの量のウイルスを吸い込めば感染するのか、感染を防ぐために必要な換気量はどれくらいかなど、基本的なことがまだ解明できてない」と説明しました。さらに、「住宅内で感染者が発生すると、通常の換気装置では対応できない。同じ家の中で家族の誰かが感染したら、ほぼ他の家族にもうつると思った方がいい」と注意を促しました。
そのほか、冬季の換気方法として『2段階換気』法を紹介しました。誰もいない部屋の窓を開けて外気を取り入れ、廊下などを経由させて住人がいる空間に給気することで、冷気感を和らげることが可能になります。
オンライン会議ツールのZoom で参加した村田氏は、既存の戸建住宅に設置されている換気システムのメンテナンス状況を紹介し、「フィルター清掃を怠ると換気装置の換気量が低下してしまう」と説明した上で、「住んでいる期間=フィルターを掃除していない期間という住宅も少なくない。施主に対してフィルター清掃を定期的に実施するよう周知を徹底させてほしい」と住宅関係者らに訴えました。
寝室と水回りセットの間取りが増える可能性も
シンポジウムでは、「With コロナでどういう住宅が求められるか?」をテーマに、ウイルスを居室に持ち込んだり、家庭内で広げたりしないための建築計画について、2人の講師に(株)キクザワ社長の菊澤里志氏と山本亜耕建築設計事務所代表の山本亜耕氏を加えた4 人のパネラーが討論しました。
コロナ対策として効果が見込まれる間取りについて、山本氏は「1階にベッドルームと水回り、2階にリビングという、これまで高齢化対応としての採用が多かった間取りが、コロナ対策にも功を奏するかもしれない。家庭内で感染者が出た時に隔離できる」と話し、林氏も「ベッドルームと水回りをセットにしたホテルの一室のような間取りは、海外の先進国で見られる。日本もいずれそうした間取りが増えていく可能性はある」と同調しました。
また、菊澤氏は現場での感染対策について、「盲点になりがちなのが、仮設トイレの取っ手やペーパーホルダー、玄関ドアのレバーハンドルの消毒。みなさんも注意してほしい」と呼びかけました。