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北海道SHS会員が積極的に話し合う技術研修会を開催しました

2019.06.30活動報告

現場見学の後、記念撮影


北海道SHS会は6月13日午後、第1回技術研修会を開催しました、会員ら約50名が参加した研修の前半は、参加者がバスに乗って会員工務店が建築している途中の住宅現場を見学し、後半は会議室を借りて現場見学のまとめとディスカッション、そして最後に国の住宅政策やSHS会会員の住宅性能について学びました。

会としての研修はこれまでも定期的に行っていましたが、講師を招いて技術や国の施策について話すのを会員が聞いて勉強する、という形式でした。


真面目な会員が多いので、今までのやり方でも良かったのですが、会員同士の交流を深め、議論を活発にするためには、受身的に人の話を聞くだけでなく、他の会員の住宅施工現場を見学して気づきをもらい、疑問点や感じたことを会員同士で話し合う。そういう積極的な雰囲気を創ることで技術力の向上を図りたいと始めたのが今回の研修会です。

北海道SHS会では、最初の頃は会員が現場を見せ合っていました。やがてSHS工法が定着してくると「もう必要ない」と考えたのかもしれません。あまり行われなくなりました。

一行はバスでまず江別へ


しかし会が発足して30年が経ち、経営者が交代する会員も増えました。先人が苦労して編み出した工夫などを、こうした研修会を通じて若い世代に伝えていきたいという思いもあります。

建築中の現場で床組みや防水施工などをじっくり見学

現場のそばは緑あふれる公園


さて研修会当日は、会員はバスに乗って江別市内にある拓友建設(株)さんの現場に向かいました。到着した場所は目の前に公園があり、静かで落ち着いた雰囲気の住宅街でした。


現場は、外壁下地に外張り断熱材の青いスタイロエースをほぼ張り終えた直後。この後に外壁を張り、内部の工事を進めます。


会員は、窓回りの防水処理や梁回りの先張りシートの施工を観察したり、外壁部分は無機繊維系断熱材で200mm相当という断熱性能の高さに感心する人など、熱心に見学していました。


この写真。会員が床下空間の施工について熱心に話し合ってるみたいです。スマホで写真を撮っているのは、参考にするためでしょう。
「次の現場に行く時間だよ~」という声が聞こえ、ようやく腰を上げます。思った以上にみなさん熱心です。


多くの会員が集まる機会はなかなかないので、建物をバックに記念撮影も。
大人の社会科見学みたいな、楽しそうな雰囲気です。


バスに再び乗って、札幌市西区へ移動。そこは、(株)丸三ホクシン建設さんの現場でした。こちらはスタイロエースを張り始めたところで、下地である茶色いOSB合板が見えた状態でした。


会員は屋根を支える登り梁の加工の見事さや、細部の納まりや施工の流れなどをチェック。スマホで気になる箇所の写真を撮ったり質問したりしながら見学していました。

現場見学の後、活発な質疑応答

北海道SHS会の首藤一弘会長


この後、札幌市中心部に移動し、ビルの一室で技術研修会を開きました。拓友建設の妻沼社長と丸三ホクシン建設の首藤社長が、見学した現場の建築概要についてそれぞれスライドで説明しました。


拓友建設の現場で建てていた住宅の断熱性能は、UA値0.23Wと国の省エネ基準0.46Wの2倍も高性能。でも、拓友建設では珍しくないレベルだそうです。また、屋根は板金ではなくシート防水と呼ばれるビルなどで使われる工法を採用。

会場からも、「シート防水工法の現場を見られて良かった」という声も出ました。木造住宅の屋根としては比較的新しく、防水性能の高さとコスパの良さから今、注目されている工法だからです。拓友建設さんによると、耐久性にこだわるのならばラミネート鋼板を使った屋根がお勧めだとか。住宅の屋根も、今はいろいろな選択肢があるのだと感心します。

会場からは活発に意見、質問が出た


また同社では、毎年札幌版次世代住宅基準のトップランナー住宅を施工しています。会場からは、「建物価格がかなり高くなって施主に納得してもらうのが大変でないか?」という質問も出ました。

妻沼さんは、「標準仕様の断熱性能が高いため、トップランナー基準に対応した場合の標準仕様との差額は100万円程度で済んでいる。補助金は200万円出るので、お客様からすると差額を出しても得をする提案になっている」と答え、会場のみなさんも「そうか」とうなづく人が多数。

丸三ホクシン建設の発表に対しては、
「手加工にこだわるメリット、デメリットを教えてほしい」という質問が出ました。
首藤さんは、「自分自身、35歳まで大工をやってから経営に参加した。ちょうどその頃、木材工場が図面を元に柱や梁などをあらかじめ加工する「プレカット」が増えたことや、大工が弟子を取って修行させるという徒弟制度が廃れたことで、大工が必要とされにくくなり、育てる仕組みも失われて数が激減した。そこで大工を育てたいという思いが強くなった」と答えました。

経験豊富な大工を集め、大工の仕事を確保するために仕事を探した日々もあったとか。冬、仕事がないときは木材の墨付け作業をやってもらうことも。

今回現場で目立った登り梁ですが、これはプレカット工場では対応できないそうです。また、室内に現し仕上げとするため、手加工にしないときれいに仕上がらないそうです。

こうして大工の手加工にこだわった家づくりをしていくうちに大きなメリットがでてきたそうです。それが、「大工の自主性が高まったこと」です。

つまり、図面を見て大工自身が仕事の段取りも含めて考え、行動するようになったのです。仕事を安心して任せられるほど自主性が高まった、それがメリットです。それは、大工自身にとっても、仕事に対するプライドが高まることになります。

SHS工法なら、UA値0.30Wを切るのが容易

山田道男氏


この後、デュポン・スタイロ(株)製品技術部の山田道男氏が、「建築物省エネ法の一部改正とSHS住宅の外皮性能評価」について講演しました。国の省エネ基準義務化が取りやめになるなど、政策に一部変化があったことなどが報告されました。

また、同社がSHS会員からUA値計算の依頼を受けた住宅について、UA値の平均を出したところ、0.32Wと省エネ基準の0.46Wを大きく上回る値でした。SHS工法が高断熱住宅に向いた工法だと言えます。また、近年普及が進んでいるトリプルガラス入り樹脂サッシの採用や、充てん断熱を付加断熱として併用することで、UA値0.30W以下の達成は容易であることも指摘しました。

技術研修会は、7月下旬にも予定されています。こうした取り組みを通じて、会員同士の交流がさらに活発になり、いい家づくりにつなげていけたらと願っています。