2025年度までに新築住宅の省エネ基準が義務化へ
2021.10.22その他 お知らせ段階的な性能水準引き上げも
ニュースでご覧になった方も多いと思いますが、2025年度までに政府は新築住宅の省エネ基準を義務化する方向で議論を進めています。実は昨年春から新築住宅の省エネ基準の義務化がスタートする予定でした。しかし、義務化の準備ができていない住宅会社があることなどを理由に、いったん中止になりました。
その後、菅・前総理大臣が2050年までにカーボンニュートラル、すわなち温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを所信表明演説で宣言。これをきっかけに、建築行政の方向性が再び変わり、カーボンニュートラルを実現するには、住宅の省エネ化が不可欠という認識で一致し、省エネ基準の義務化をできるだけ早く行う方向性に転換しました。
最近では国土交通省が、社会資本整備審議会建築分科会・建築環境部会・建築基準制度部会の合同会議を、10月4日にオンラインで開催。脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策・建築基準制度のあり方や、住宅性能表示制度の見直しについて、主な審議事項と議論の方向性を確認し、住宅を含む2025年度の省エネ基準適合義務化や、省エネ基準の性能水準引き上げ、既存ストックの省エネ改修、太陽光発電の普及・拡大などの論点について、各委員が意見を交わしました。
※当日の配付資料などは https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house05_sg_000247.html をご覧下さい※
2030年度以降の新築はZEHレベルに
審議されたのは、1.新築住宅等における省エネ基準適合 2.省エネ基準の段階的な引き上げを見据えた、より高い省エネ性能の確保 3.既存ストック(建物)の省エネ対応 4.太陽光発電など再生可能エネルギー利用の促進 5.小規模木造建築物等の構造安全性を確認するための措置 6.中大規模建築物の木造化や、混構造などによる部分的な木造化の促進 7.既存ストック(建物)の長寿命化に向けた省エネ改修の円滑化等にかかわる措置―の7つ。
このうち、新築住宅等における省エネ基準適合では、2025年度までの義務化へ向けて適合を義務付ける住宅等の区分・範囲や性能水準・時期、義務化の円滑かつ確実な施行を確保するための取り組みなどを議論しました。より高い省エネ性能の確保では、2019年度時点でZEHレベルの省エネ性能を満たす新築住宅の割合が7軒に1軒しかない現状を踏まえ、2030年度以降に新築される住宅等でZEHレベルの省エネ性能確保を目指すために、省エネ基準の段階的な性能水準引き上げをどう進めるか、性能表示制度で省エネ基準を上回る等級はどんな内容に設定するかなどを議論の方向性として示しました。
快適性の確保や評価しにくい省エネ技術に対する意見も
省エネ基準関連では参加した委員から、「義務化する省エネ基準の性能水準は慎重に決めてほしい。むやみに断熱性だけ求めると、窓が小さくなって快適性を損ねてしまうこともある。省エネかつ快適な住宅の普及が大切」、「現在の外皮基準や一次エネ基準では、評価できる省エネ技術が限られている。評価しきれない省エネ技術でもCO2排出量削減に貢献できるものは建物の評価につなげていくことが、これから大事になってくるのでは。多様な省エネ対策が可能な基準と目標を整備してもらいたい」などの意見が出ました。
また再生可能エネルギー利用の促進では、「太陽光発電の義務化・導入拡大が有効と思うが、自然環境に発電量が左右されるため、蓄電池の設置が非常に重要になる」、既存ストックの省エネ対応では「国も補助制度で支援しているが、事業者とオーナーの省エネ改修を促すために、健康面のメリットなど光熱費以外のベネフィット(恩恵)が伝わることにも力を入れてもらいたい」などの意見が挙がりました。
北海道への影響は?
この議論が進んでも、北海道への影響はほとんどないと言っていいでしょう。北海道の省エネ基準はUA値が0.46W、ZEHレベルの省エネ基準はUA値が0.40Wですが、北海道SHS会員が建てる住宅はほとんどがZEHレベル基準もクリアしています。なぜ省エネ基準を義務化するためにこんなに時間がかかるのか、不思議に感じるほどです。
既に北海道は、北方型住宅の新しい省エネ基準としてUA値を0.34W以下に設定しています。また、札幌市は札幌版次世代住宅基準のスタンダードレベルをUA値0.28W以下としています。北海道も札幌市も、国が求める省エネ基準よりもずっと上のレベルを目指しています。北海道SHS会では、今後も独自に高断熱化、省エネ化を目指し、一歩先をいく高性能住宅を道民のみなさまにご提供していきます。
【社会資本整備審議会とは】
社会資本整備審議会は、国土交通大臣の諮問に応じて住宅・建築等に関する重要事項を調査・審議する機関で、分野に応じて学識経験者らによる専門部会が設置されています。
今回の合同会議では、これからの住宅・建築分野の省エネ対策と建築基準制度のあり方を審議。今後4回の会議が予定されています。国交省は審議内容のうち法改正等が必要な事項について、早ければ次期通常国会に提出する考えで、2022年1月頃までにパブリックコメント(意見公募)を経て取りまとめたいとしています。