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長沼と札幌で現場見学会と技術研修会を開きました

2023.07.08活動報告 お知らせ

北海道SHS会では7月6日午後、現場見学会と技術研修会を開きました。
現場見学会には約40名が参加。チャーターしたバスで札幌駅北口を12時30分に出発。近郊の長沼町にある建築中のS様邸に向かいました。

1時間ほどで現地に到着。本来は建築途中でスタイロフォームが見える状態ですが、当日の天気予報は雨となっており、建物躯体を守るため、急きょ断熱材の上に透湿防水シートを貼った状態での構造見学となりました。

幸い見学時は雨は降っておらず、会員はゆったりと建物内外を見学しました。会員の1人が、建物内に置かれていた図面を見ながら屋根材の施工など技術面の質問を当会顧問・拓友建設の妻沼澄夫社長にすると、回りには多くの人が集まりました。また、建物の外では数名の会員が「あの窓のおさまりはどうしてる?」「オレはこう思う」など、楽しそうに話し合ってる姿も。

図面をのぞき込みながら、疑問を妻沼社長にぶつけます

S様は農業技術者ということもあり、住宅の断熱性、耐久性などに高い関心を持ち、ホームページなどを通じて拓友建設さんにお声がけされたそうです。断熱性能を表すUA値は0.23Wと国の断熱等性能等級6をクリア。長期優良住宅の認定も受けます。また、住宅基礎外周部の断熱は、スタイロフォームATを使用するなど、シロアリ対策も万全です。

2階へははしごで登ります

 

2階からは市街地を見渡せました

 

2階の施工状況なども見学

1時間ほどして一行は再びバスに乗り込み、札幌に戻りました。TKPガーデンシティ札幌駅前を会場にして、技術研修会が始まりました。

 

超高性能住宅のエネルギー消費について勉強

 

はじめに、丸三ホクシン建設社長・首藤一弘北海道SHS会会長が「今日はこんなにたくさんの方にお集まりいただき、ほんとうに嬉しく思います。私自身20数年前は試行錯誤の中、いろいろな断熱方式を試してきましたが、確実に暖かく安心して住んでいただける住宅は、外張り断熱工法だと確信し、以来SHS工法をずっと採用しています。昨年秋頃から住宅市場は冷え込んでおり、みんなで信念を持ってより良い家づくりに取り組みたい」とあいさつしました。

首藤会長

最初の講演は、北海道科学大学平川秀樹准教授による「トップランナー基準対応高性能住宅における日射エネルギー消費への影響」という講演です。札幌版次世代住宅基準は、プラチナグレードが最上位基準ですが、昨年まではトップランナーと呼ばれていました。

平川准教授

平川准教授が現在データ取りをしている住宅は、札幌市内で4年前に建てられました。UA値は0.17Wと現在の断熱等性能等級7を上回る超高性能。延床面積は155m2(約47坪)と最近の平均的な住宅よりも1.5倍近い広さです。この高性能住宅内8ヵ所に精密な温度計を設置しました。継続的に温度変化を記録して、同時に宅内の消費電力やガス消費量など、日射量なども継続的に記録。温度と日射量が住宅のエネルギー消費にどういう影響を及ぼしているのかを調査しています。

これまで、本州では「高断熱住宅にすると夏は熱が逃げていかないから暑い」などという議論が沸き起こることもありました。北海道SHS会員は経験的に、「断熱・気密・換気がしっかり取れていれば夏が暑すぎるということはないはず」と考えていましたが、やはり学術的な根拠(エビデンス)がほしい。そこで拓友建設さんが平川准教授に依頼し、研究室の学生とともに先のテーマによる研究を続けています。データ取りは今後も続け、最終的な研究結果がまとまるのは来年以降になりそうです。

今回はその中間発表ということですが、「なるほど」と思ったのが8月の電力消費量の結果。日射が1日8時間以上(=晴れ)の場合と、1日4時間以下(=曇りか雨)の場合で1日の電力消費量を比べると、12.1kWh対11.3kWhとわずか0.8kWh(800Wh)しか変わりませんでした。この差は、エアコンの消費電力分と推定できるかもしれません。1日24時間で800w分と言えば、電気代に換算して30円強ぐらいでしょうか。ほんとにわずかなものです。この間、室温は概ね26.5度以下をキープしています。つまり、超高断熱住宅は、エアコンの効きも良くて夏も快適と言えるのではないでしょうか。

この住宅では、夏の高い高度の日差しは遮り、冬の低い日差しは家の中まで取り込む設計がされています。さらに、冬の日射熱取得を考えて、南面と西面には「日射取得型」のトリプルガラスをセレクトしています。今後の研究で、細かな設計の工夫がエネルギー消費の抑制につながると実証されるといいですね。

 

トリプルガラス樹脂サッシ開発のきっかけは札幌版次世代住宅基準

倉島氏

続いてはYKK AP株式会社の倉島氏が、北海道で窓がどう進化してきたかについて話をしました。道内では約30年前にアルミサッシと樹脂サッシの出荷量が逆転。樹脂サッシが主流となりました。以来、2枚ガラスのペアサッシが普及してきました。

一方、2012年に札幌市が「札幌版次世代住宅基準」をスタートさせました。そこで断熱等等級6相当が必要となる「スタンダード基準」を札幌市が普及させたいと表明したことで、同社は「今のサッシでは基準をクリアできない」とトリプルガラス(3枚ガラス)樹脂サッシの開発を始めます。

さらに、スタンダード基準をクリアするにはより分厚い断熱が必要になることから、柱の間に断熱材を入れる「充てん断熱」だけでは足りなくなり、SHS工法のような外張り断熱がより多く採用されると考えました。そこで新規開発するサッシは、外張り断熱に対応した設計としました。それが2014年に発売されたAPW430です。売り上げは7年で10倍になるなど、道内で爆発的に普及。さらにその評判を聞きつけて本州でも売れるようになり、現在は本州向けの生産の方が多いぐらいだそうです。リフォーム用、防火地域用など製品バリエーションも増えています。

今回のイベントでは、会員外の住宅会社数社様もご参加いただきました。当会の活動をオープンにしてご覧いただき、興味を持っていただければという考えからです。これからも活発に活動し、会員の数も増やしていきたいと考えております。