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高断熱・高気密住宅の上階と下階の音対策はどうする?

2023.11.10家づくりのヒント お知らせ

高断熱・高気密住宅では、車の走行音など外部騒音が聞こえにくくなる一方、足音や物の落下音など室内で発生する音が耳につくようになると言われています。今回は特に2世帯住宅で問題となりやすい、上階から下階に伝わる衝撃音対策を紹介します。

高断熱・高気密技術が普及する前は、車が走っている音など屋外の音が室内に入ることで室内で発生する音はかき消されるため、さほど問題になりませんでした。ところが外壁の断熱が厚くなり、家全体のすき間をかき集めても名刺サイズより少ないことが珍しくなくなった現在の高気密住宅では、屋外からの音が聞こえにくくなった分だけ室内の音が聞こえやすくなり、「子どもの話し声が気になる」といった問題が生じやすくなっています。

これまでも室内で発生する音の問題については、さまざまな対策が考えられてきました。特に上階の音が下階に響く問題に対しては、

(1)1階天井ふところにグラスウールなどの繊維系断熱材を吸音材として施工する

(2)防振吊り木を使う

(3)2階床下地合板の上に遮音マットや石こうボード、緩衝材等を敷設する

(4)1階天井を2階床組から分離した独立天井にする

―などがありますが、音の問題は個人個人の感覚差もあるほか、住宅会社が対策の効果を検証することが簡単ではないだけに、「これが正解」という決まった方法を見つけるのはなかなか難しいのが現状です。

床衝撃音対策

まずは、床衝撃音対策について考えます。
よくある「上階で子どもが走り回ったりする音がドンドン響く」という音の対策です。

参考にしたい工法の一つが、道総研・北方建築総合研究所開発のローコスト高性能遮音工法。乾式2重床や独立天井の採用、天井ふところへの繊維系断熱材の施工など、複合的な対策を行うことで優れた遮音効果を発揮する工法です。

北総研が開発した比較的ローコストでできる遮音対策

この工法は、2階床を乾式遮音二重床とします。2階床根太の上に張った構造用合板24mmの上に緩衝ゴムが付いた高さ120mmの束(つか)を立て、その上にパーティクルボード20mm、強化石こうボード9.5mm、合板12mm、複合フローリング15mmを施工。1階天井は独立天井とし、3尺ピッチで配置した2×10(210)材を天井根太として、石こうボード15mm2枚を重ね張りして施工。ふところには繊維系断熱材であるグラスウール24K100mmを設置します。

北総研の測定では、RC造コンクリートスラブ150mm厚に匹敵する遮音性能があった(グリーンの折れ線が北総研の二重床)

2018年にコスト試算した時は、賃貸アパートの一般的床仕様より約5000円/m2高くなりました。今はもう少し高いかもしれません。それでも、この構造でマンションなどに使われるRC造のコンクリートスラブ150mm厚の床とほぼ同じレベルの遮音性能を実現できるため、比較的ローコストと言えます。

吸音材活用も一つの手

また、最近の住宅では吹抜けやリビング階段の採用、オープンな間取りが多くなったことで、1階の生活音が吹抜けや階段室から2階に響いてしまうといった問題も出てきていますが、この問題を吸音材によって解決しようという例も見受けられます。

市販されている吸音材の一例(大建工業)

例えば、AV観賞用の吸音・調音パネルに使われている高機能不織布を使って造作した吸音パネルを1・2階天井や階段の蹴込み部分に設置した住宅では、吹抜けから伝わる1階の生活音が2階で騒がしく感じることもなく、1階リビングでテレビを付けている時に2階ホールでオーディオを聴いても、それぞれの音が邪魔にならないなどの効果が体感できたそうです。

吸音スリットボードの施工例(写真左側の壁部分:アサヒ様ホームページから)

このような吸音効果を持った製品としては、(株)アサヒが北総研の指導を受け、道産カラマツ・トドマツと吸音材を組み合わせた「吸音スリットボード」を開発・販売しています。パーティション用と壁面用があり、音の反響を軽減することで会話が聞こえやすくなるなどの効果が期待できます。