ZEH水準の木造住宅は構造計算が必要になる!?
2023.11.22家づくりのヒント その他 お知らせ構造計算書は200ページ以上の超大作!
これまで木造住宅では、構造計算を行う会社は多くありませんでした。
構造計算(許容応力度計算)とは、人や家具などの重さ、またその地域の地震・積雪・風などの自然の力に対して、建物の安全を維持できるかを検証する計算のこと。計算することによって基礎と地盤を正しく評価したり、必要とされる壁の量やバランス、部材の大きさや耐力を定量的にチェックします。
さて、2階建てや平屋建ての木造住宅で延床面積が500m2以下の建物を、住宅業界では「4号物件」と呼んでいます。この4号物件は、必要壁量や壁配置バランス、柱頭・注脚の接合などを、建築基準法で規定されている仕様規定(簡単な計算と仕様チェック)で確認すれば構造計算を行う必要はないと規定されているからです。
建築確認申請でも、建築士が設計・工事監理を行っていれば、4号特例によって構造規定の審査そのものが省略されます。
ところが、2025年4月に行われる予定の「4号特例・構造基準見直し」や、住宅価格の上昇などを背景に、木造住宅でも構造計算の重要性が高まってきています。
特に4号特例・構造基準見直しの影響は大きく、延床面積200m2以下の平屋を除いて確認申請時に構造規定関連の図書を提出することになるのはもちろん、ZEH水準(再生可能エネルギー利用設備なしでも可)以上の性能の木造住宅であれば、壁・柱の構造基準が見直しとなることによって、構造計算をしないと柱小径(柱の断面寸法)の拡大などによって設計・施工への影響が避けられなくなるからです。
構造計算すれば基準法の壁量計算・柱の小径確認は不要
ZEH水準の住宅は、断熱等級5以上の高性能な住宅です。断熱性強化で付加断熱施工や太陽光パネルを屋根に搭載することもあり、省エネ基準ギリギリの住宅に比べると外壁や屋根構造に負担がかかると考え、壁や柱の基準を厳しくすることにしたのです。
構造計算をしない場合、建築基準法施行令による壁の構造基準の確認は、新たに規定される「1.実際の建物荷重に応じ、必要壁量を計算で求める精緻な方法」か、新たにZEH水準等に対応する基準が追加される「2.簡易な壁量確認方法」のいずれかで行うことになります。1.は壁の仕様に応じて必要壁量を簡易に把握できる早見表(試算例)を使える予定となっているものの、2.は計算に用いる係数がZEH水準未満の住宅よりも厳しくなります。
同じく柱の構造基準への適合も、ZEH水準の住宅では柱の小径確認で計算に用いる係数の数値がより厳しくなり、北海道で最も一般的な105mm角では適合できないケースもでてきそうです。仕様を変更するとなると、建物のコストアップにつながる可能性が高くなります。
北海道では、ZEH水準の性能を持った住宅が主流です。たとえば札幌市が行った『札幌版次世代住宅に関する調査結果』によると、札幌市内で2022年度に着工した戸建住宅のUA値(断熱性能)は、ZEH水準の0.40w以下が約87%に達し、大半の住宅がZEH水準になります。
そこで構造計算が注目されています。構造計算を行えば、基準法施行令第46条の壁量計算が省略可能となります。柱は仮に105mm角がダメでも105×120mmなどの平角材を使えるので壁厚は105mmのままで済みます。さらに構造計算を行うことで、実際の積雪荷重も加味した柱・梁の断面や基礎等のチェックが可能です。4号特例・構造基準見直しへの対応として、構造計算を行う意味は大きく、過剰な設計を避けることができるのでコストダウンにもつながる可能性があります。
速報!国が新しい計算ツールを整備すると発表
一方、構造計算することによる住宅会社側の負担の大きさを懸念する声もあります。11月現在、全国で住宅会社や設計事務所を対象に開催している、国土交通省の改正建築基準法説明会では、構造計算をしなくても壁量や柱の小径を算定できる新たな設計支援ツールを国が整備すると発表しました。住宅の屋根や外壁の仕様、床面積、太陽光発電設備の有無など住宅図面の情報を入力するだけで必要な壁量や適切な柱の小径を算定できるそうです。強度の高い樹種を選べば105mm角の柱でもクリアできる可能性が高くなるとか。簡易な計算で構造安全性を高め、「簡易な壁量確認方法」のような過剰設計を防げるため、取り組む住宅会社が増えそうです。